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べテイ.リフトン著 武田尚子訳『子供たちの王様』サイマル出版会1991年 一八七八年ポーランドに生まれたユダヤ人、ヤヌシュ.コルチャックは、医師であり、教育家であり、高名な作家であり、子供たちのためのラジオおじさんでもあった。約束された輝かしい未来を捨て、ワルシャワに『孤児の家』と『われらの家』を作り、孤児たちと生活を共にした。二つの孤児院で実践された大胆な教育は今日見ても新しく、残された膨大な著作は、彼の教育理念と子供たちへの情熱を伝えて余りある。一九四二年、彼は孤児たちとともにナチスの犠牲となり、トレブリンカの強制収容所に消えた。自らを救う機会は何度となくあったが、彼は子供たちと最後を共にして勇気と慰さめを与えてやることを選び、尊厳をもって彼らを死に向わせた。収容所へ彼らを送る家畜車に、整然と並んで静かに歩み入る子供たちを統率するコルチャックを見て、ナチスの将校は思わず敬礼したという。『虚構であれ、実話であれ、私は本を読んでこれほど感動させられたことはない。』というフランクリン.リッテルの評はそのまま、訳者ほか多数の読者の声を反映している。ヨーロッパでコルチャックの生涯は伝説となり、アンネ.フランクの名とともに、広く知られている。